ch.1-2 暗い世界、昏い世
クロスゴット・フォレスト
森の中に一人の青年が立っている。
青年の耳は先が尖り、青年の眼は両方で色が違う、右眼が金色、
左眼が蒼緑である、彼の左眼の下にはタトゥーが彫ってある。
青年を囲むように7人の影が立っている。
鼻がとても高く、いや高いと言うよりは犬の鼻みたいな感じである。
耳が、獣のように長く尖っている、青年の耳も尖っているが
彼らとは比にならない。
そして、異常に長い爪、それが青年と影の種族の違いを決定的にしている。
彼らの総称は、
「・・・ビースト(亜人種)か」
青年が呟く。
そして、背負っていた剣を鞘から抜いた。
青年の持つ剣は剣と言うよりも大きく平らな鉄の板のように見える。
見た目には重そうなのだが、青年は片手で軽そうに持っている。
「なに、止まってんだよ?・・・来ないなら行くぞ!!」
言い終わらないうちに彼の近くにいたビーストに斬りかかった。
「!!」
ビーストはいきなりの出来事で一瞬びくっと、体を震わせたが
地を蹴り、後ろに飛んで斬撃をかわす。
着地して青年に視線を向けようとした、が
そがは実行されることはなかった。
青年は斬撃をかわされた後、ビーストと同じように地を蹴り
ビーストの上に跳び、そのまま、大剣をビーストの頭に突き立てた。
青年の体重と落下の速度により、大剣の破壊は頭を潰すだけでは止まらない、
延髄が破れ、脳髄が辺りにぶちまけられ脊髄を砕こうとも尚威力は減らない。
終いに、体躯が圧力により潰され四肢がブツリと音をたてて千切れた。
そこで、大剣の破壊が止まった。
青年は、返り血やらなんやらを多いに浴びて立っていた。
そして、残りのビースト達に振り返る。
「どうした?怖気づいたのか??」
青年はにやりと唇を吊り上げた。
ビースト達は我に返り、次々と青年に襲い掛かった。
青年の右側から一人、左側から二人のビーストが飛びかかった、
青年はまず、右側から来たビーストの蹴撃を前に出て避けた。
次に、背に担いでいた大剣を大きく左に向かって横に薙いだ、
「!」
左側から迫っていた、一人目のビーストは空中に飛んでいた為体勢を
変えることができず、攻撃媒体であった自分の右脚を切断、と言うよりは
削り取られるように削がれた。
もう一人のビーストはそのまま地を蹴り、青年に迫った。
青年は、大剣を地面に突き立て、剣を軸に回し蹴りを放つ、が
ビーストは避ける動作をせず、そのままもろに顔面に青年の
蹴りを喰らう。
「!」
青年は一瞬戸惑ったがすぐに悟り、握っていた大剣を地面から抜き、
大剣を青年の背後に向かって勢いよく投げた。
「!!!」
後ろから青年に迫ろうとしていたビーストの胴体に深々と大剣が刺さった。
「ガッ・・・!!?」
不意を突かれたビーストは小さく呻く事しか出来ずそのまま絶命した。
青年は大剣を投げ放った後すぐに青年の脚をしっかり顔面と左手で掴んでいた
ビーストを勢いよく殴り飛ばした。
ビーストは思ってもいなかった青年の力の強さに対応しきれず派手にぶっ飛び
大木に思いっきり頭部を打ちつけ、気絶した。
その隙を突くかのように右から迫っていたビーストが長い爪のある手を
振りかざしながら、迫る。
青年はあっさりと迫ってきたビーストの爪撃を避け、カウンターキックを
鳩尾(みぞおち)に喰らわす。
「グゥっ・・!」
そのまま、地を蹴り、顔面に蹴りを浴びせる。
ビーストは流れるままに地を削るようにして吹き飛ばされた。
残るビーストはあと三人になった。
三人になったところで、一人のビーストが青年に訊(き)いた。
「そう言えば、お主の名を聞いてなかったな・・・」
そのビーストは、さっきの戦闘の中で唯一動いていなかった。
おそらく、リーダー格であろう。
「フ、お前らに名乗ったところで無意味だろう」
青年は蔑んだように笑った。
「ほう・・・。相当自分に自信があるようだな。・・・しかし、過信していては
身を滅ぼすだけだ!!」
そのビーストはそう言うと、青年の目の前から消えた。
「・・・!・・フ、中々愉しめそうじゃないか」
青年はそう言い、さっき投げ放った大剣をビーストから荒々しく抜き去った。
「・・・俺の名前はアズールだ、これから暫くヨロシク」
アズールと名乗った青年は愉しそうに呟いた。
Next.