雨時
RAIN
東京都内某所私立K高校の1年2組の窓から眺める外の景色は大雨によって霞んでみえる。
窓の外から教室に視線を戻す。
数学の授業中だ。
K高校に入学してから半年、入学当初は内容を理解できていたが、今ではすっかり分からない。
サインだ、コサインだ、など言われてももはや僕にとってはなんの意味も持たない言葉である。
僕の名前は子葉 燈星(しようとうせい)。
雨の日を皆は嫌うけど、僕は雨の日が好きだ。逆に、快晴の日にはなにか嫌な感じがする。
先生をボーっと見ていた眼を上にあげて、時計を見る。
14時55分・・・、あと5分で今日の授業が全て終わる。今日は一日中雨を眺めていたから大して長くは
感じなかったけど、普段なら溜め息の一つでもついていただろう。
今日の授業は、あと5分で終わる。
やっと、この縛り付けられたような感覚のする学校から開放される。
僕は集団生活が嫌いだ。理由はやっぱり縛り付けられたみたいな感じがするからだ。
他人の機嫌を損ねないようにお互いが様子をみてひいたりおしたりの繰り返し、
莫迦(ばか)みたいだ。
僕がそんな事を考えているのが解るのだろうか、クラスの皆は僕とあまり深く関わろうとしない。
僕にとっては願ったり叶ったりである。
そんな事を考えていたら、終業のチャイムが聞こえた。
考え事をしたら、5分なんて一瞬だなと、妙なところでなんか関心してしまう。
SHRが終わって皆が帰りの支度・部活の準備をし始める。
もちろん僕は部活など入ってるワケもなく、帰りの支度を整えはじめる。
僕は誰に声を掛けるでもなくざわめきたつ教室を静かに出て行く。
「燈星のやつまた一人で帰っちまったよ」
クラスメイトの一人が友人たちに話しかける。
「ほっとけよ。アイツ、なんか俺たちと関わろうとしないじゃん、根暗なんだよ。アイツは」
友人の一人が言う。
「そうかぁ?アイツ初めて会った時はそんな奴じゃなかったような気がすんだけど・・・」
「気のせいだよ、気のせい」
さっき発言した友人が言う。
「・・うー・・ん・・」
別の友人が
「それよかさぁ、部活いこーぜ!」
その場はその一言で締めとなり、一同は部活動の準備を始め、解散した。
燈星は下駄箱まできて初めて気付いた。傘を持ってくるのを忘れていたことに。
どうしようか、悩んでいると近くであたふたとしている女子がいた。
どうやら、彼女も傘を忘れたようである。
これが僕と彼女とのはじめての出会い。
そして、僕の転機の訪れでもあった。
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