楓の場合
俺の名前は樫井 楓(かしいかえで)。
今日でついに中学を卒業する。俺は自分の部屋でそんなコトを考えていた。
俺は、すごく嬉しいのと少しのこれからの不安を感じていた。
これから、暫く楽に過ごせるのと、高校でうまくやっていけるかどうかということだ。
と、
いきなり部屋のドアが勢いよく開け放たれ誰かが入ってきた。
「かえでー。早くガッコいこうょ〜♪」
・・・・隣に住んでいる、幼馴染みの顔が俺に近寄ってきた。
あわや、ぶつかるかというところでそいつは止まった。
俺は一瞬ドキッとしてしまった。・・・我ながら情けない。
そいつは俺の顔を伺っている様子できょろきょろと眼を動かしていた。
「なんだよっ、し・・・」
俺が喋ってる途中でそいつがさえぎった。
笑っていた。
「えへへ〜、照れちゃってる〜、顔赤いぞ。きゃ〜♪」
・・・・・・殴りてぇ。
いや、しかし仮にも女であり幼馴染みでもある、ここはそのよしみということで
抑えといてやろうと自分の心の中で誓う。
とりあえず、両手でそいつの顔を押しのけた。
「うぉ・・・?」
そいつは意味わからん声をあげながら押されるままにしたがって最終的に
ぺたんと、床に座った。
一息ついてから、
「・・・お前、今何時だと思ってんだよ?」
と言いながら俺は時計をわしっと掴みそいつに突きつけた。
「・・・ぇっと、7時30分?」
「30分?じゃねぇ、?じゃ!!
今行ってもひたすら教室で待機じゃねぇかよ。それとも1人で待ちますかー?
そこんとこどうでしょうか?椎さんよぉ」
わざとらしく、崩れた様に喋る。
「だってさぁ、卒業式だよ?もう中学ともお別れだよ??」
俺は、更にわざとらしくため息をつく。
「椎、お前は子供か??もう3年間も行ったんだから充分じゃん」
椎はむくれた様で俺んちの窓から自分の家を眺めた。
「ぶぅ。・・・どうせ、私は楓みたいに割り切れないですよぉだ」
ますます子供か、お前は。
「・・・まあ、どうでもいいや。んなこたぁ・・・」
椎が反応してこっちを向く、
「な・・!どぅ・・・」
俺は手で制して続けた。
「はいはい。どーせ、なんも食わずに家(うち)来たんだろ?
だったら、お前も一緒に食っとけよ」
「え?でもぉ・・・」
椎はまごついてる様だ。俺はドアを開けながら
「どっちにしろ、お袋がもう用意してるさ、椎の分もな」
階段を2,3段降りてから振り返り
「・・・・早く来いよ、メシ冷めちまうぞ?」
椎はまだうじうじしてる様だ。
「別に誰も迷惑だなんて思ってねぇよ。
・・・・むしろ遠慮してる方が迷惑だよ」
俺は笑いながら言った。椎が部屋から出てきた。
いつも通りの笑顔が浮かんでいる。
「ぶぅ、・・そんな言い方しなくたっていいでしょ!」
俺は適当に相づちを打ちながら階段を降りていった。椎もそれに続く。
リビングについてお袋に挨拶した。
「おはよう、お袋」
お袋は台所からこっちに眼を向けた。
「あら。やっと起きたの?楓」
「ああ、起こされた」
苦笑いしながら答えた。椎がリビングに入ってきた。
「おはようございます!小母(おば)さん!」
「あらあら、元気ね椎ちゃんは」
椎は満面の笑みを顔に浮かべている。
「えへへ・・・」
照れてるようだ、・・・・ホント子供かお前は。
とか思いながら俺は朝食をとるべく椅子に座った。
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