手
Many hands
「ねえ、友達助けたくない？」
猫がしゃべった、普通では逃げ出すほどのことだが今はそんな
ことなど言ってられない。菜緒は勢いよく黒猫をつかむと勢いよく
質問する。
「真希はどこ？なんであんたしゃべれんの？それに助けるって
どうやって？」
黒猫は咳き込んでから言った。
「ちょっと、落ちついて。出来ればもう少し静かなところの方が
いいんだけど」
そういわれて周りを見た。通行人達が菜緒に注目してるのが分かった。
しかも、通行人達の眼は菜緒を動物虐待もしくは変な人としてとらえて
いるようだ。
菜緒は急に恥ずかしくなり黒猫をきつく持ったまま一気に自分の家まで
走った。
「ハァ、ハァ、ハァ・・・」
菜緒は自分の部屋に入ってやっと解放されたような気がした。
「・・・ちょ・・っと、・・・ね・・ぇ、・・くる・・し・・・い」
そう言われて菜緒はいきなり猫の首を握りしめていた手を放した。
猫が対応出来ずにしりもちをついた。
「いたっ！」
そして菜緒はまたいきなりさっきの質問を浴びせる。
「真希はどこ？なんであんたしゃべれんの？助けるってどうやって？」
猫は背筋を伸ばして言った。
「ボクは第２４代目閻魔大王の閻。今はちょっと理由があってこっちに
来てるのさ。もちろん猫なんかじゃないから普通にしゃべれるのさ」
「そんなことどうでもいいの、それより真希はどこに居るの？知って
るんでしょ？」
「・・・そんなことって、結構驚くとこなのに・・・」
そんなこと言ったら普通に猫が会話している方が驚くものだ。
「で？どこにいるの真希は、早く言ってよ！」
菜緒が閻の尻尾をつかんで乱暴に振り回す。
「わあ！おちつい、いたっ・・・話すから、話すからぁ〜」
自称閻魔大王は今にも泣き出しそうな声をあげた。
「まず、君の友達はまだ生きてるよ。ただ場所までは分からなかった。
だけど君の友達をさらった奴らのことなら知ってるよ」
「誰なの？」
閻はもったいぶったような言い方をしようとしたが菜緒の手がそうは
させないと閻の尻尾をとらえられる位置に置いてあった。
「奴らの名前は誘い手」
閻は少し焦ったような声で早口に言った。
「さそいで・・・？」
菜緒が聞き返す。
「そう、名前の通り誘い手は常に手の形をしている妖怪さ」
「ようかい・・・？」
また、聞き返した。
「そ、妖怪」
菜緒は呆れたように
「妖怪なんて、居るわけないじゃん」
と言った。
「・・・う〜ん、百聞は一見にしかず、か。実際に会ってみた方が話が
早く進みそうだし、じゃあ、実際に会ってみよう！」
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